日本で拡まりつつある「予防医学」ですが、高齢社会を見据える世界各国でもその動きが高まっています。そこで今回は、先進国における予防医学についての考え方や取り組み例、高齢社会世界トップを走る日本政府の目指す国づくりについてご紹介します。
先進国で予防医学が拡がる背景
世界各国で抱える課題が異なるため予防医学が拡がる背景も異なります。しかし共通する理由には世界の高齢化率の上昇や平均寿命と健康寿命の乖離などが考えられます。
世界の高齢化率
UN,World Population Prospects,The 2019 Revisionによると先進国地域の65歳以上人口比率が2019年で約9%、さらに2030年には約12%、2050年には約16%、2100年には約23%と予測されています。以下は先進国における高齢化率の推移を示したグラフです。
▼グラフ_世界の高齢化率の推移
日本の高齢率は欧米諸国と比較すると上がり幅が大きいですが、アジア諸国と比較すると中国の次に日本となり、ほかの地域ともそこまで差がありません。特にアジアにおいて高齢化の課題は高まっていることがわかります。
世界の平均寿命と健康寿命
次に世界の平均寿命と健康寿命を比較してみましょう。以下の表にまとめました。
平均寿命 | 平均寿命 | 健康寿命 | 健康寿命 | |
男 | 女 | 男 | 女 | |
日本 | 79.64 | 86.39 | 72.6 | 75.5 |
アメリカ | 75.4 | 80.4 | 65.2 | 67.0 |
シンガポール | 79.3 | 84.1 | 72.4 | 74.7 |
オーストラリア | 79.3 | 83.9 | 70.2 | 71.7 |
ドイツ | 77.33 | 82.53 | 69.7 | 72.1 |
どの国においても、平均寿命と健康寿命の乖離があることがわかります。日本においては男性7.04歳、女性10.89歳の乖離があるものの、ほかの国も同じかそれ以上の差があります。この差を埋められるかが医療費の削減並びに労働力の確保につながると考えられるでしょう。
先進国の政府における予防医学の取組み例
先進国各国の政府方針で進められている予防医学施策はどんなものがあるのでしょうか。アメリカ、イギリス、ドイツ、シンガポール、オーストラリアを例に取り組みをご紹介します。
アメリカ
アメリカでは2000年1月に保健社会福祉省が「Healthy People2010」を提唱し、まず2010年までの目標として467項目定めました。その後同様のイニシアチブに基づき、現在も取り組みが進んでいます。日本における健康日本21は「Healthy People2010」を参考にしたといわれています。
またよくアメリカと日本の医療について比較されるテーマは、公的医療保険制度の違いです。日本は国民全員の健康が守られるように国民皆保険制度をとっていて、実際にかかった医療費の2〜3割負担で済みます。
一方アメリカは、受給資格を得た人だけがメディケア・メディケイドという保険制度に加入が可能となり、具体的には以下の条件を満たして受給が可能です。
保険制度 | 対象者 | 運営 |
メディケア | ・65歳以上 ・身体障害がある ・重度の腎臓障害がある | ・連邦政府 |
メディケイド | ・低所得者 | ・州政府 ・連邦政府 |
条件を満たさない人は民間の保険に加入するしかありませんが、この保険料がかなり高額のため、加入しない人も多いのです。病院に行くと最先端技術を受けられる所以、各病院で競争がおき、医療費も高くなると考えられています。
経済的に余裕がないと単なる風邪症状や不調状態では病院に行けません。なので、風邪や不調などにならないように予防する意識が国民のなかで高まっているのです。
ほか現在日本で拡がっている企業内で従業員推進を図る健康経営も、アメリカ発信の考え方です。現在の健康分野に関してはアメリカの施策は日本の模倣となっているため、今後の動向にも注意が必要になります。
イギリス
イギリスでは1948年から国民保健サービス法(NHS)として、国民へ医療を原則無料で提供しています。医療といっても治療だけではなく、予防からリハビリまでを含む包括的保健医療です。NHSは保健担当大臣が統括し、保健省が定めています。
国民はかかりつけ医を登録し、救急でない限り一般医(GP)から受診し、必要に応じて病院を紹介されるシステムです。クリニックと大病院との棲み分けがしっかりとなされています。
ドイツ
ドイツには家庭医制度があり、内科医・一般医・小児科医が該当します。基本的には家庭医の診断を受けた後に、必要に応じて開業専門医・大学病院・総合病院に紹介されます。風邪や不調などの軽い症状であれば家庭医の対応です。
またドイツで課題となっていた慢性疾患の重症化予防のため、2002年に疾病管理プログラムが導入されました。糖尿病や気管支喘息、冠動脈性心疾患などが対象です。このプログラムと家庭医制度とが連携することで、予防と慢性疾患の重症化予防とが推進されています。
シンガポール
2030年には超高齢社会入りをすると予測されているシンガポールでは、2012年3月に保健省による「ヘルスケア2020マスタープラン」が提唱されました。その後、2017年度には「予防治療、地域医療、価値」へのシフトをイニシアチブとして提言し、11月にはヘルスケア産業変革マップなども発表しています。これらの発表により、シンガポールでは政府が国をあげて予防医学の考え方へ移行していることがわかります。
オーストラリア
オーストラリアの医療制度では風邪、外傷、腹痛などであっても必ず統合診療医/一般開業医(General Practitioner/GP)の受診が必要です。GPを受けて専門性の高い治療などが必要だと判明した場合に、例外はありますが、ようやく病院での受診が可能となります。メディケアという健康保険に入ると医療費が無料です。
そのような国の医療制度を見据え、予防医療を目指してNational Health and Hospitals Reform Commission(NHHRC)という団体が設立されたことにより、戦略的に予防医療に対して改革が進んでいます。
日本国が目指す予防医学とは
世界のトップを独走する超高齢社会である日本においては厚生労働省による2035年、2040年を目標にした指針「保健医療2035」に基づき動いています。大きく「保健医療の価値を高める」「主体的選択を社会で支える」「日本が世界の保健医療を牽引する」というビジョンの元、各々具体的な行動を示しているのです。予防医学に関わる方は「保健医療2035」を読み込んだうえで、活動をするのがベターでしょう。
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記事執筆・監修者
一般社団法人日本和食ライフスタイリスト協会 代表理事
管理栄養士・和食ライフスタイリスト
合田 麻梨恵
初めての海外訪問時に日本との素材の違いに驚愕し、”和食の魅力”に目覚める。管理栄養士として不特定多数が購入するコンビニ弁当に携わり健康な方を増やしたいと考え、商品開発者に。しかし実際は仕事として毎日3食コンビニ食で激太り&心身ともに不調をきたし限界を感じたため、異なる方法で和食で健康になれる魅力を伝えようと決意し、独立。
和食料理教室を通じて100名様以上の不調改善に成功した「食」の面、全国の自然発酵生産者100軒以上の訪問による「農業・醸造」の面、論文2万件読破した「予防医学」の面から和食の研究を重ね、未病の身体づくりができる”令和の和食TM”を提唱。健康経営を通して働く人の健康のサポートやメディア出演、監修など。