昨今、歯科における「食育」の取組みが一般的になり、歯科治療だけでなく、日々の食生活や食習慣のアドバイスが患者へ提供されるようになりました。歯科領域でも食育が重要とされる背景には日本人の食生活の変化や医療費の問題、生活習慣病の予防など、広範囲にわたる優先が背景にあるのです。
そこで今回は歯科で行う食育の目的や背景、重要性、指導法などをご紹介します。 健全な食生活、むし歯の予防だけでなく、全身の健康とQOL向上を目指しましょう。
歯科における食育の目的
100年時代を迎える現代社会。人々の寿命が延びる中で、ただ長生きするだけではなく、その質、つまりQOL(Quality Of Life)の向上が求められています。健全な口腔環境は、健康な身体への入り口とも言われ、良好な食事摂取能力や会話能力の維持につながります。
問診や検診、血液検査は、身体の健康状態を知る手段として重要ですが、歯科の食育を受けることで、その結果をさらに良いものに導くことができるのです。全体的な生活の質を高め、100年時代をより充実したものにしていきましょう。
食育全体像についてや食育基本法については以下も参考にしてください。
歯科で食育が着目されるようになった背景
歯科の領域で食育の重要性が増してきた現代ですが、その背景には、社会的・文化変遷や健康への意識の変化が影響している。費用の増大、そして生活習慣病の増加といった問題が、歯科における食育の必要性を強く感じさせるものとなりました。
医療費圧迫の要因
高齢化社会の進行とともに、長寿だけでなく「健康寿命」が注目されるようになった背景には、歯科疾患含めた生活習慣病の増加による医療費圧迫が挙げられます。食生活がそれに伴う直接的な影響を当面しているのです。
歯の健康が損なわれると食事の取りづらさや栄養不足につながる可能性があり、結果として全身の健康にも問題が指摘されています。このような背景から、歯科における食育の重要性が再評価され、患者さんの食生活指導や改善の取り組みが強化されるようになりました。 医療費の適正化と健康寿命の延長のために、歯科の役割は今後も増していくことでしょう。
生活習慣病の入り口
生活習慣病は、現代社会において多くの人々が解決する健康問題の一つとなっています。実は、口腔内の健康状態は、生活習慣病のリスクを予測する大きな指標となるのです。特に、歯周病は糖尿病や心血管疾患といった生活習慣病との関連が研究で示されています。
口腔内の不調や炎症は、全身の健康に考えられる可能性があり、実際に全身の疾患との関連が指摘されてきました。このような背景から、歯科での食育は口腔の健康だけでなく、全身の健康を見据えた予防策としての役割が強調されるようになっています。
日本人の食生活の変化
昔から歴史を辿ってみると、日本人の食生活は大きく変化しています。伝統的な和食を中心としたバランスの良い食事から、ファーストフードやインスタント食品、外食中心の食生活に移行してきたのです。その結果、栄養バランスの乱れや過度な摂取量につながり、健康問題の一因となっています。特に、砂糖や塩分の摂取量が増加し、これがむし歯や歯病の原因となることが多い原因の一つです。
さらに食生活の変化は口腔内の環境にも影響を及ぼし、腸内細菌叢のバランスの崩壊や唾液の質の変化を起こしているといわれています。日本人の食生活の変化は、歯科の食育の重要性を再認識させる大きな課題の一つです。
歯科における食育の重要性
食育は限定的に健康を維持するだけでなく、生活の質を向上させる目的もあります。特に歯科における食育は、その影響が日常生活の中心的な要素に直結するため、非常に重要とされています。
まず、「会話が楽しめる」という点です。 口腔内の健康は、言葉をはっきりと発する能力(発音)や、人とのコミュニケーションにも影響します。むし歯や歯周病など問題が進むと、人と会話することが困難になり、人間関係や社内交流にも悪い影響を与える可能性があります。
次に、「食事楽しめる」という点です。健康な歯や歯茎は、さまざまな食材をかみ砕き、消化し、嚥下するために必要で、美味しく食事を楽しむための基盤です。歯科の食育は、これらの日常の喜びを維持・向上させるための重要な取り組みとなっています。
歯科における食育の指導法
歯科における食育の重要性を理解した上で、具体的にどのように取り組むべきかが鍵となります。正しい知識と習慣を身につけることで、口腔内の健康はもちろん、全身の健康も向上させられるでしょう。実践的な食育の指導法とその効果について詳しく解説します。
むし歯にならない!おやつの取り方
おやつは子どもから大人まで多くの人にとって日常の楽しみの一つです。しかし、おやつの選択や取り方が間違うと、むし歯のリスクが高まってしまいます。
むし歯を予防するためのおやつの取り方としては、まず糖質が少ないか入っていない食品選びが基本です。お菓子やパン、麺、など明らかに糖質とわかるものは判断しやすいですが、例えばケチャップやソース、ドレッシングといった加工調味料やフルーツなどにも糖質が多く含まれている場合があるので、注意が必要です。
また一日に何度もおやつを摂取するのではなく回数を制限したり、おやつの後にはしっかりと水を飲んで口の中をすすいで予防したりするのも良いでしょう。
栄養が偏らない!食への興味づけ
食事のバランスは、口腔内の健康だけでなく、全身の健康を支える基盤です。特に子どもの成長期において、栄養が偏らない食事の摂取は非常に重要で、偏食が続くと、栄養不足やむし歯のリスクが増加します。
そもそも偏食したり、好き嫌いがあったり、ご飯を食べないといった食のお悩みは、子どもが食に対してどれだけ興味を持っているのかにも関わっています。子どもの頃から食に触れる経験が大切です。
例えば、食材の色や形、テクスチャーを活用して食事の楽しさを伝えたり、実際に食べているものを写真を見ながら伝えたりなど五感を刺激すると、子どもにも伝わりやすいです。
意味のある食事を!食品の選び方
少し食生活を改善しただけでは変化がない場合は、もっと深堀する必要があります。その一つの手段として、どんな食品を選ぶのかといったところを伝える方法があります。
例えば、本当に栄養価値のある食材や調味料なのか、患者さんにとって過不足のある食品は何なのか、といった点です。ここまで提供できている方は少ないので、差別化要素にもなるでしょう。
以下も参考にしてください。
本質的に健康になれる食育とは
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歯科からの食育で、QOL向上と医療費削減を!
歯科での食育は、ただの口腔ケアだけではなく全身の健康をも高め、QOL向上につながり、全員が活動すると医療費削減も夢ではありません。そのためにも、歯科でできる食育は数多くあります。食品の選び方から、正しいおやつの取り方、食への興味づけまで、全方位的なアプローチなどです。
ぜひ今回、学んだポイントを意識して取り入れて、健康な生活を実現する一助にしてください。
記事監修・執筆者
一般社団法人日本和食ライフスタイリスト協会 代表理事
管理栄養士・和食ライフスタイリスト 合田 麻梨恵
初めての海外訪問時に日本との素材の違いに驚愕し、”和食の魅力”に目覚める。管理栄養士として不特定多数が購入するコンビニ弁当に携わり健康な方を増やしたいと考え、商品開発者に。しかし実際は仕事として毎日3食コンビニ食で激太り&心身ともに不調をきたし限界を感じたため、異なる方法で和食で健康になれる魅力を伝えようと決意し、独立。
和食料理教室を通じて100名様以上の不調改善に成功した「食」の面、全国の自然発酵生産者100軒以上の訪問による「農業・醸造」の面、論文2万件読破した「予防医学」の面から和食の研究を重ね、未病の身体づくりができる”令和の和食TM”を提唱。予防医学専門家養成や健康経営を通して働く人の健康サポートやメディア出演、監修など。